ヒカリノサスホウヘ

  　私、入院とか手術ってした事無いんです、と美容師のお姉さんは俺の髪の毛を切りながら言った。入院とか手術した事無いにこした事は無いですよ、と俺はしゃがれた声で言う。 
その程度で不快に思ったりはしないから大丈夫ですよ、と言う意味を込めて少しだけ微笑む。鏡越しに見た美容師さんは、少しだけ不安そうな表情を和らげて、そうですよね、と笑った。 

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別に俺だけがこうなんじゃない。だからそんなに腐りやしねぇ。それが１０万人に１人とかなら腐るかも知れないけど、３０００人に１人じゃ笑えるくらいの高確立だよな。個人差はあるだろうけど、それは腐る理由にゃならんよ。 
切った張った縫い合わせた、しかも２回目、全摘出出来てなくてまだ体内にありますしかも頭蓋の中と背骨にくっついてます、みたいな人生。達観しちゃいねぇけど、これが俺にとっての普通の人生な訳じゃないですか。それでも、あぁ、やっぱり世の中の平均で言えばレア寄りなんだな、と傷口見せた後のリアクションを見て思う訳だ。 
そのレアは良い方か悪い方か、未だによくわかんねぇ。多分、良いも悪いも無いんだと思う。多少、レアってだけで、きっと普通だから。 
強いんじゃない。弱いから、耐えているだけなのだろうと思う。俺じゃない人間がどれ程耐えられるか知らんし、興味も無い。俺にとっての普通ってだけで。 
アトピーが酷かった頃は、かなり腐ってたな、なんて思いながら笑える。…少しは強くなったんだろうか。強くなりたかったのか、まだ強くなりたいのか、そんな事すらどうでもいい。強いとか、弱いとか、どうだって良いじゃんか。そんな強弱に、何の意味も無い事くらいわかるだろ？ 

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それでも、俺が腐ったりしないで、折れたりしないで、死なないでいられるのは、みんながいてくれてるからなんだなーって、思うのだよ。愛されてんなー俺、と。ありがたい。感謝してるよ。還元出来るかわかんないけど、生きられるところまで生きるさ。何度でもありがとうを言うし、思うし、感じるし、そう簡単に死なないって約束するさ。 

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光りの射す方へ！ 

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女の子が喋っているのを聞きながら眠りたい気分。