冷静な慟哭と情熱的な咆哮

あらかじめ言っておくが、スイッチが入った訳じゃない。
冷静になっただけだと思う。

＊＊＊

ちょっと前、現代詩に落とした新作でも書いたけれど、
よくあんな事を考えている。
もし、この体と引き換えに、誰かの涙を消せるのなら、
みんなにはごめんけど、俺、この体いらねぇって。
何とも甘ったれた、夢見た発言だとは思うのだが、
そう思うのだから仕方が無い。
実際には無理な話だし、どうなる訳でもないのだけど、
傍で苦しんでる人間が複数いると、なお更である。
「もし俺が…で、奴らが救われるのなら、俺は喜んで」

んな事したって喜ばれないだろうし、
下手すりゃ迷惑なんだろうけどね。勝手な押し付けだし。
それは俺が楽になりたいってのと、
いい事したぜ！って気分を味わいたいのと、
本当に救いたい気持ちが混ざってる訳だが、
何をしたら救えるのか、わからない。
何を言えばいいのかわからない。
だから、そんな事を口走る訳である。
困った奴だ、俺ってのは。

＊＊＊

前にも書いたが、子供の泣き声が苦手だ。
その世界が憎くなるし、その世界に生きている俺も憎いし、
その世界を作り上げている一部である俺が憎い。
勝手に型にハマって、勝手に限界値を設定して、
何とも勝手にほっとしてる俺のタガを、いとも容易く外してくれる。
子供が苦しさや哀しさで、泣き叫ばなきゃいけない世界なんざ、
無い方がマシだと俺は思ってる。

＊＊＊

俺は酷い劣等感に苛まされている。
だが。
俺を見下したような台詞は吐かせん。
俺を馬鹿にした奴を許すつもりは無い。
俺に嫌がらせした奴らを放置する気は無い。
しかし、この劣等感は何なんだ。
俺に何が出来るというのだ。
何もしていない！

ドガァ！
雄雄しい咆哮は排水溝の中に消えていく。

俺はいいものを作るぞ。
俺の名前を忘れられないくらい、有名になってやる。
大金を掴む。それを元に、もっといいモノを作ろう。
全身をラバーソールとヴィヴィアンで固めよう。
君にはエミリーテンプルを与えよう。
巨大な家には、スクリーンだってつけてしまおう。
サウンドシステムも勿論揃えてね。
スタジオもあるといいな。
バケモノみたいなマシンで、次は何を作ろうか。
そうだね、カメラも全部欲しいね。
仕事用に何でも詰める大きな車と、自分用の車を持とう。
汚い中古の車にも乗ろう。
美味しいご飯を食べよう。
時にはカップ麺も食べよう。
綺麗な景色の見える国や街に出かけよう。
汚い格好で路地裏を歩き回ろう。

それが仕合せか、と聞かれれば、んな事は無いと思うが、
劣等感が裏返った無様はプライドと欲望は、留まる事を知らない。
酷い劣等感だ。あまりにも酷い劣等感だ。
自信の欠片も無い。うぅむ、困った。

この劣等感を埋めて欲しいのだ。

＊＊＊

来学期の授業登録事前検証が始まった。
１５単位、１８単位、１８単位、ときたので、
来学期は１２単位で、少しだけ楽をしようと思う。
金曜日から月曜日まであけてある。製作できる！
写真、映画、工作、なんでもいい。
製作の時間がたっぷりある！

同時に、他の使い方も考える。
こっちは、どうなるかわからないけどね。

＊＊＊

奴らの勝手な行動がわからないでもない。
その気持ちが、わからん訳じゃない。
でも、それを笑う奴らの考えも、わからんでもない。
冷めた左目、熱い右目。
冷静な慟哭と、情熱的な咆哮。
噛み付いたら、どっちの血が流れるのかね。