エゴイスティックに空を飛びたい。早く、仏じゃなくて神になりたいから。

 　九年前に俺をあっさりと裏切り、全てを灰燼に帰し…いや虚無へと葬り去ろうとし、俺に「人を信じる」と言う事を辞めさせた張本人を以て、再び、人を信じると言う事を、初めてみようかと思う。そんな我が人生を少々呪わしく思いながら、同時に自身の罪悪を…疑念と言うのは罪悪だ…恥じつつ、俺は生きていく事を、覚悟するのである。

　そう、「恥の多い人生」だった。

　それを挽回出来るかはわからないが、自分が自分である事を意識し、それ故に、他人がいてくれるのだと言う事に感謝し、自分が何かの代替品であるかも知れぬと言う恥ずべき疑念を全て破棄し、怯えずに、自分も相手も信じて、生きていこうと、思うのである。他の誰でもない、俺だからこそ、俺は頼られ、甘えられたのだ。

　俺は、生きるぜ。死なない。死ねない。死にたく無い。壊れもしないし、停滞もしない。どれくらいのスローペースな前進かもわからないが、成長を約束しよう。変化しようとし続ける事で変わらない部分もあるだろうが、俺は成長し続ける事を誓う。

　俺は大して頭も良く無けりゃ、強くもねぇ。だが…そう簡単には死なない。約束する。絶対だ。自ら命を絶つような真似はしない。命を落とすような無茶もしない。生きるんだ。生きる事が素晴らしいとは思わない。苦しいし惨めだし無様かも知れない。格好悪いのかも知れない。でも、死ぬよりはマシだ。俺は俺の為にも死ねないし、俺の近くにいてくれる奴の為にも死ねない。

 

 

　ただもし、この考えの根底である「誰かの代わりや、代替品では無い…俺が俺であるが故に」と言うものが崩れ去ったら、また酷く心を閉ざすだろうね（笑）二度目は無いよ。それが暗く陰鬱であっても、俺は、構わない。

 

 

　好きな女の幸福を…あの世だろうと来世だろうと、それを願って、思い描いて泣いてなにが悪い。この道が平坦じゃねぇのは、とっくの昔にわかってんだ。知らない男の死を聞いて即座に否定したのも、泣いたのも生まれて初めての事だ。

　それだけ、好きな女の中で、その男が大きな存在なのはわかっていた。だからこそ、俺は…俺の中でも、知らぬ間に、大きくなっていたのかも知れない。見た事も無い男を、だ。その女が、どれだけその男を好きか、少しでも知っているからこそ、俺は否定したかったし、知らぬ間に涙も出て来た。

 

　わかんね。俺も、ちと冷静さを欠いてるね。


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君のような秀才にはわかるまいが、

「自分の生きていることが、人に迷惑をかける。僕は余計者だ」

という意識ほどつらい思いは世の中に無い。

 

―太宰治

 

 

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　もし俺が危なくなったら、助けてやってくれ。少し危ないくらいだったら放っておいたって構わない。でも、俺が死にそうだったら、助けてやってくれないか？頼んだぜ。なぁ、俺はきっと大丈夫だけど、死にそうだったら声をかけてやってくれ。頼んだぞ。俺はまだ大丈夫だ。大丈夫だよな？