キチガイ＋乙女＝クリスタル純情キチガイ乙女

親父。病気。君。

親父は僕に全てを与えてくれた。
ただ、ひとつだけ、納得してねぇのは、「誉」だ。
何をしても、僕を認めない発言は、僕を深く傷つけたぜ。
親父に褒められる為にやってんじゃねぇ。
だけど、たった一言の誉れも無いんじゃ、俺もさ、
エネルギー出ないじゃん。
剣道三段取ったって、免許取ったって、入学決めたって、
何したって、ひとつも認めねぇじゃん。
半分は、嫉妬とか照れなんだろうけどさ。
「自信」につながるような、エネルギーになるような、
そんな言葉が、欲しかったんだ。

だから僕は。
他人に優しくありたいんだ。甘いだけなんだけど、今は。
拒否とか拒絶とか、出来ないんだ。
誰も傷つけずに生きていくのは不可能だってわかってる。
戦争がなくならないのはわかってる。
だけど、夢を見るよ。
一日だけ、たった一日だけ、誰も死なない日が来ないかなって。

誰かが悲しむのは見たくない。せめて周囲で、そんな顔は見たくない。
お前の、君の、アイツの、喜ぶ顔が見たいだけで、
叱ってやれねぇ、甘いから。
僕はアイツに惚れて死ぬって言う予言は当たってるし、
一緒にダメになるって予測も完璧に当たる。

「一緒にダメになってよ。」

俺は親不孝ものだから、親より先に死なないようにしてるけど、
お前が望むなら、許可するなら、それすらも、棄てていいと思ってる。
お前はそんな事、微塵も望まないだろうし、許可しないだろうけど。
幸せだった夜が、忘れられないんだ。
安心しきってるなよ、俺、辛いんだぜ？

僕は親父を尊敬している。
言った事は完璧にこなすし、俺みてぇなクソをここまで育ててるし、
言ってる事も正論だよ、間違いない、本当の事だ、
そりゃ心配だろうさ、こんなヤクザな学科に進んで、
将来、それで喰おうってんだ、心配だろうさ。
わかってるよ。
でもさ、酒の力で説教して欲しくねぇんだ。
そんで、一度でいいから、力沸く言葉、くれよ。

僕は、僕の不完全性が許せないんだ。
精神的な面でも、関係性に於いても。
完璧なんてないのがわかってるのに、それに近づこうとする。
無謀だ。
僕は僕自身に絶望してる。完璧じゃないから。
もっと的確な優しさで、せめて周囲で誰も泣かないで、くれ。

俺は弱い。自分のしぶとさが憎い。有難い。
助けてくれ！
声が、聞きたい。
優しい声で、可愛い声で、残酷な言葉を吐くんだろ？
声が、聞きたい。
でも迷惑だよな。遠慮しておくよ。

Ｋちゃん、電話ありがとう。